朝日連峰と周りの山々

大朝日岳(おおあさひだけ)

写真は、小朝日岳付近より

 

朝日連峰の主峰で標高は1870.8mの山です。東から望むとバランスのよい柔らかな山容、南北からは美しい三角錐を見せてくれます。日本海に面した豪雪地帯にあり、直下の大朝日小屋から下のガンガラ沢などには7月にも豊富に雪が残り、Y字雪渓と呼ばれます。標高は低いものの、日本海近くの豪雪等気象条件の厳しさから森林限界を越え、日本海側特有の植生と豊富な高山植物群を見ることができます。

冬の積雪は、主稜線の風下では30mほどと言われたりもしますが、実際にはどのくらい積もっているのかわからないほどで、一般の登山は、6月中下旬の朝日連峰夏山開きから、紅葉の10月中旬までが多くなっています。

県外から訪れる方の中には、大朝日岳(おおあさひだけ)を「ダイアサヒダケ」と呼ぶ方もあったりします。

山域の原始性はそのまま残され東北の山らしい静けさと奥深さを感じることができます。

 

以東岳(いとうだけ)

写真は、狐穴小屋付近から

 

以東岳は、朝日連峰と呼ばれる峰々の北端に位置し、熊の毛皮の形と呼ばれる大鳥池の南に聳える標高1772.1mの山です。東の村山盆地からもこの特徴的な台形の山容を望むことができます。深田氏の日本百名山では、以東岳より縦走し、大朝日に至ったと記載があります。以東岳から大朝日岳を望み、朝日連峰全体を見渡すとまさに北の深き山々の連なりを実感することができます。

小朝日岳(こあさひだけ)

写真は5月初め、大朝日方向より

 

大朝日岳の北東、標高1647mの山です。南西は岩山の様相を呈し、黒俣沢の源頭にあたる小朝日岳と大朝日岳の間の最低鞍部は熊越えと名前がついています。

名の小朝日とは、大朝日岳の近くにあるための名であると思われますが、別な名を冠してもよいのでないかという方があるほど存在感のある山です。

県外から訪れる方の中には、大朝日岳(おおあさひだけ)を「ダイアサヒダケ」と呼ぶ方もあるのと同じく、こちらを「ショウアサヒダケ」と呼ぶ方もあります。地元ではこあさひだけ、あるいは、岳を省略してこあさひと呼び慣らしています。

 

御影森山(みかげもりやま)

写真は大朝日から平岩山を経て向かう途中

 

標高は1534.4m、大朝日岳からは南東へ4km弱、平岩山を経てちいさなピークをいくつか越えていきます。朝日鉱泉からはいくつかの吊橋を渡り、上倉山への急な登りをこらえつつたどり着く山です。朝日鉱泉からこの山を経て大朝日岳へ向かうルートは標準的な速度で8時間ほど、隠れたロングルートになっています。そのために人の往来は少なくまさに静けさを感じることができます。遠方からもはっきりわかる尖った山容はよい目印です。

赤見堂岳(あかみどうだけ)

写真は石見堂岳から4月に

 

赤見堂岳は標高1446m、朝日連峰の三方境より進み、天狗角力取山から北の月山へ伸びる峰々の先にあります。夏の登山道はありませんが、春早くには豊富な雪量、なだらかなアップダウンの連なりが稀に訪れる登山者を魅了します。山頂からは、朝日連峰のまさに広大な山域を一望することができます。遠く東からも山容を望むことができますが、やさしげなピークであるためあまり目立ちません。石見堂岳からさらに奥にあり、エスケープルート(そもそも登山道がありません)も無いため、充分な土地勘と装備が無い場合はおすすめしません。

石見堂岳(いしみどうだけ)

写真は赤見堂岳方向より振り返ったところ

 

石見堂岳は標高1286.6m、以東岳と月山の中間より少し北に位置する山で、山頂部はのっぺりとした広場のようになっています。冬でも不思議と雪のつもらない場所に大きな岩があるのが名の由来でしょう。朝日連峰に三つあると言われる角力取場のひとつがここにあるそうです。夏の登山道は無く、山菜やきのこ採りの道、けもの道がほのかにあるだけです。登山道の設定はなされていないので、一般の登山はおすすめしません。近年は早春の残雪豊富なころに山スキーやスノーシューで訪れる方が若干いるようです。

障子ヶ岳(しょうじがたけ)

障子ヶ池手前より

 

障子ヶ岳は標高1482.2m、朝日連峰の三方境より、天狗角力鳥山を経て月山方向への支稜線を北へ進んだところにある山で、南からは見事な三角錐を見せてくれます。東側は一面の岩壁となっており、朝日連峰の随一の岩山となっています。ふもとからのアプローチは、大井沢より南俣沢登山口からバカ平、竜ヶ岳付近を経由する登山道と、紫ナデを経由する登山道があり周回できるので、健脚者であれば日帰りで楽しんでちょうど一日コースとなっています。のんびりされたい方には、天狗角力取山に避難小屋がありますので一泊二日の山遊びにも好適となっています。

飯豊連峰(いいでれんぽう)

大朝日岳山頂から

 

飯豊連峰は、標高2128mの大日岳を最高峰とし2,000mを越えるピークが連なり、朝日連峰とは、「飯豊朝日」とつなげて呼ばれることも多い朝日連峰の兄貴分のような山々です。地元では、飯豊は険し、朝日は深し、と言い慣らしており、たいへんに険しい岩と雪の山々です。

森林のエリアとしては鳥海、月山から朝日を経て飯豊までひとつながりで、日本海に面した豊富な積雪量から日本海側の多雪地に適応した植物群の典型を示します。このひとつながりのブナを中心とした原始性の残る森林はツキノワグマの吠えるところでもあり、山菜やきのこ、狩猟といった狩猟採集の文化をも残しています。晴れた日には朝日連峰からは南に望むことができます。

写真の奥が飯豊連峰、飯豊と言えば、の石転び沢が仄かに見えています。中央部のちょこんと尖った特徴的な山容は祝瓶山です。

月山(がっさん)、湯殿山(ゆどのさん)

大頭森山山頂付近から3月に

 

山形県のほぼ中央部にあり、朝日連峰からは北方に聳える1984mの山です。月山は火山で成り立ちは朝日連峰とは異なっておりますが、湯殿山を含めて山のエリアとしてはひとつながりの山となっています。中腹の志津集落(温泉があります)は、常時人が住み集落を形成している場所としては日本一積雪量が多いところと言われています(アメダスの観測地点でないため公式には酸ヶ湯が日本一ですが、こちらのほうは酸ヶ湯からさらに1~2m多く雪が積もります)。

写真で月山の左に見える湯殿山とともに山岳信仰が色濃く残り今でも白装束の行者の行きかう姿を見ることができます。朝日連峰からはいたるところから北に望むことができます。

鳥海山(ちょうかいさん)

石見堂岳山頂付近から

 

山形県の海沿いの北端に位置する2236mの活火山です。チョウカイフスマ、チョウカイアザミなどの特産種があります。朝日連峰からは晴れて空気が澄んだ日にはるか北に見ることができます。朝日連峰から見る山容は驚くほどに月山と似通っており、鳥海山が見え、月山が偶然にガスに隠れるなどすると「あれ、今日の月山はやけに小さいな」というように見慣れた方ほど間違う、そんなことを話題にしたりします。鳥海山も古くからの信仰の山で、白鷹山地のなかにも標高531.3mの鳥海山という山があり、鳥海山から分祀をうけたというようなこともあるそうです。

大頭森山(だいずもりやま)

山頂より展望台を月山を背景に写す

 

朝日連峰から大井沢の各集落の並ぶ寒河江川の対岸にある標高984.4mの山で、朝日連峰の山々、月山、奥羽山脈を望むことができます。夏には山頂まで800mほどの距離の駐車場から散策路で行くことが出来ます。冬には大井沢か、大江町田の沢からのアプローチになりますが、ぐんと体力を要する山になります。冬は登山道は無く、コンパスを用いながら歩くことになるので、土地勘の無い方、雪に不慣れな方にはおすすめしません。周囲はブナ林をはじめ、朝日連峰の中腹程度までの植生と共通の植物群が見られ、植物観察にもおすすめの山です。