朝日連峰周辺で見られる草花たち

朝日連峰で見られる草花の紹介です。

順はおおむね上に記載のものから、よりふもと近くに、進むほどより高いところに咲く花です。

新しい項目は随時更新していきます。

ショウジョウバカマ

 

落葉樹の林のなかで春の早くに花を咲かせる春植物(スプリングエフェメルラル)の中では珍しく常緑の花です。ふもとの低山にもよく見られます。写真は5月はじめのハナヌキ分岐のあたりのものです。

カタクリ

 

ふもとの山里では群生し山菜としても食べられるスプリングエフェメラル(春植物、春の妖精の意)の代表的な花です。朝日連峰の残雪多い地では6月にも見られることがあります。あまり高いところには分布がそれほど見られず1,000mあたりまでの林床にひっそりと咲きます。

オクチョウジザクラ

 

日本海側に分布するチョウジザクラの一種で、カメのしっぽのように伸びた葉の先端、花のつけねのつぼのような形が特徴的です。花つきははらはらと控えめで各登山口へ向かう林道沿いなどにヤマザクラより少し遅れて花を咲かせます。

イワナシ

 

ツツジの仲間のちいさな木で、地面に這うように葉を広げます。小さなピンクの花の後は、梨の果実のような実をつけます。標高のそれほど高くない山里の田んぼの土手あたりから小朝日岳のあたりまで見ることができ、垂直分布の大きさにおどろかされます。

リュウキンカ

 

水辺や沢沿いのやや平になったところに咲く花です。春の早くから初夏になるまで意外と長い期間花を咲かせており、実も花のような形になるので実の様子も面白く見ることが出来ます。

シロバナニガナ

 

人里に咲くものと形はほとんど同じようで、花が白いニガナです。なぜか山に行くと花の白いニガナが多くなります。葉が苦いのでニガナ。そのままの名前ですね。登り始めくらいの登山道沿いによく見られます。

コシアブラ

 

若い芽は山菜として人気の高いコシアブラの秋の様子です。秋には色素が抜けるように明るい黄緑色になっていきます。山菜として利用(朝日連峰内は国立公園、生態系保護地域なので採取しないでください)する際は枝にひとつしかない芽を摘んでしまうと枯れてしまいます。ある程度大きな木で、その枝にいくつか芽があるものから間引くように採るようにしましょう。欲張ると翌年に食べられません。

ギンリョウソウ(実)

 

ブナ林の林床にところどころに見られる腐生植物です。自分では光合成せず葉緑素を持ちません。花のころには透き通るような透明感ある白さで妖しく森の中に咲きます。実のころになると目玉のようにふくらみこれもまたまるで妖怪のような姿です。

サンカヨウ

 

ほの暗い林床に咲く葉の形の特徴的な草花です。花の後は濃い紫色の実をつけます。メギ科、というあまり聞きなれないような仲間の植物です。

タニウツギ

 

山形では里近くにもたくさん見られる木です。ガザノキ、ホネカラバサミ(火葬の際、お骨を拾うのに用いる由縁)、カジノキ(家の周囲に植えると火事が起きるから)等いろんな名前がありますが、美しさに反して縁起がよくないというようなことであまり好まれません。いえ、美しさゆえでしょうか。ハチやチョウもこの花はたいへんお好みのようです。

オオカメノキ

 

低山から古寺山に至るあたりの樹林帯の中に多く生えています。葉の形が亀に似ていることから、オオカメノキの名があります。ほかに虫食いの後が多くあることからムシカリの名もあります。材はしなやかでかんじきなどの民具に、薪を縛る等にも用いられるそうです。花の時期には甘い香りがします。

ダキバヒメアザミ

 

朝日連峰周辺でよく見られるちいさな花、ひょろとした茎のアザミのひとつです。アザミは地域ごとに細かく分布が異なっており、見分けもややこしい花です。ダキバヒメアザミは花がこぶりで、葉は写真では写っていませんが、根元近くになるほど葉の基部が茎を抱くようについています。一服清水の周辺に多く咲いていて、白花もいくつか株があるようです。

クロヅル

 

樹林帯から徐々に低木になるあたりによく見られるつる植物です。里近くの林縁にも見られます。くろ、という名前ですがどちらかというと赤味を帯びたつるです。薬効があるようなのですがよくわかりません。

シラネアオイ

 

キンポウゲ科とされたり、シラネアオイ科とされたりするようですが、いずれにしても一属にこの一種だけの花として知られます。朝日連峰では主稜線にも咲いていたり、ふもと近くの沢沿いに見ることもあります。ふもと近くでは残念ながら盗掘されることもあるようで、そのうちに見られなくなるかもしれません。

ツクバネソウ

 

特徴的な4枚の葉の草です。花は葉と似たような明るい緑色でまったく目立ちませんが、実は濃い紫となり山道で目を引きます。これと似たようなものに3枚の葉のエンレイソウがあります。

ミヤマニガウリ

 

似たものにスズメウリというちいさなウリがあって、そちらはきゅうりそっくりな味です。では、こちらはどうか?と食べてみたところ強烈な苦味がありました・・・。

マルバマンサク

 

里では春の早くに黄色い花を咲かせ、季節の到来を知らせてくれる花です。日本海側のものは葉が丸みを帯びマルバマンサクと呼ばれます。大量の雪の積もる気象条件に適応した樹木で枝はしなやかで折れにくく曲げやすいことからかんじきなどに使用されます。

ツルアリドオシ

 

登山口の登り始めの道沿いによく見られるちいさな葉のつる植物です。低山のコナラ林にもよく見られます。白いちいさな花は6月ごろ。赤い実も目を引きます。

クロバナヒキオコシ

 

林縁によく生えるので登山道沿いにもいくつも見ることが出来ます。気が付かないくらいのちいさな濃い紫の花を8月から9月初め頃に咲かせます。

ハナヒリノキ

 

ツツジの仲間で、低山から見られる木です。花はちいさなつぼの形で、穂になって咲きます。毒がありかつては便所のウジを抑えるため用いたそうで、その際粉末にし、それがくしゃみをよぶため、くしゃみの古語の「はなひり」の木となったそうです。もう一説には、この木をもんで鼻の下につけると毒でひりひりするので、鼻がひりひり、はなひりのき。本当だかわかりませんが、まねしないほうがよさそうです。花の時期より紅葉の時期の葉のほうが目立つかもしれません。

モウセンゴケ

 

湿地に生える食虫植物です。コケと名がありますが、コケではなく顕花植物で、ちいさな花も咲きます。

朝日連峰には湿原はあまりありませんが、ところどころのちいさな池のふちなどに生えているのを見ることがあります。

アカミノイヌツゲ

 

アカミノイヌツゲは古寺鉱泉の裏の尾根あたりなど日当たりのよい尾根筋に多く見られます。ここの似たもののハイイヌツゲ等もありますが、アカミノイヌツゲのほうがより高い(2mほど)木になります。赤い実のついている時期なら見間違いありません。

エゾシオガマ

 

シオガマギクの仲間で古寺山付近から銀玉水付近までの砂礫の箇所にところどころ見ることができます。

ノウゴウイチゴ

 

栽培されるイチゴに近い種類の野生のストロベリーで、見慣れたイチゴの白い花とそっくりな花が咲きます。実はこぶりで指先ほど、7月ごろ、鳥原山や古寺山周辺の喬木の合間をぬう登山道沿いに多く見られます。

ミヤマコウゾリナ

 

キクの仲間のちいさな花で、茎に細かい毛が密集して生えています。砂礫の場所を好み、古寺山から銀玉水あたりまでの道沿いに多く見られます。ふもとの山村のあたりにもコウゾリナは多く生えますが、背丈はこちらはずいぶん小さいです。毛がごわごわして切れそうなので、顔剃り(カミソリ)からこうぞり、コウゾリナ、ということだそうです。

ミノボロスゲ

 

登山道の道ばたに生えるスゲのひとつです。スゲの仲間はどれも似ていてよくわかりませんが、草むらを形成するのに重要な植物のひとつであると思います。

イワカガミ

 

イワカガミは登っていく途中の樹林帯がだんだん小さくなるころから見られるようになります。葉がつやつやとして丸みを帯びていることから、カガミと名づけられたのでしょう。

アカモノ(イワハゼ)

 

ツツジの仲間で、朝日連峰では主稜線までたどり着く手前、登山道の周りの木々の背丈が小さくなってきたころに足元に見ることができます。ちいさなベルのような可愛らしい花が印象的です。

ツルツゲ

 

ハイマツの下などにひっそりと生えるちいさな木です。ツゲと名がありますが、あの有名なツゲとはちょっと違ったモチノキ科のハイイヌツゲやアカミノイヌツゲと同じ属の植物です。なにぶん小さく目立った花もつけないものですから、生えていること自体気が付かない方も多いかと思われます。ふと足元を見て、これがあったら知っておればちょっとうれしくなりますね。

ミヤマナラ

 

ミズナラの小さくなったバージョンのような木です。葉の特徴はミズナラに似ています。葉も実も背丈もずいぶん小さく、朝日連峰ではまわりの木々の背丈が小さくなる偽高山帯(ほかの山域の亜高山に相当)に見られます。秋に黄色や赤、赤紫に綺麗に色づきます。

ダケカンバ

 

クリーム色の樹皮、ハート形の葉、風に捩れた樹形を持つ樹木です。新緑のころの柔らかな黄緑色が印象的です。小朝日から大朝日へ至る道から周囲の山肌に生えている様子を見ることができます。生えている場所は尾根の周囲で、沢近くの冬に雪崩が通るところには生えていない様子が観察できます。

キタヨツバシオガマ

 

シオガマギクの仲間のひとつです。ヨツバシオガマのうち、飯豊以北にキタヨツバシオガマと呼ばれる種が分布し、大朝日周辺のキタヨツバシオガマは、銀玉水付近の湿ったところを好むものと稜線部を好むものと、少し形態や生態に違いがあり、氷河期あたりに分化したのでないかと調査が進められています。

キタヨツバシオガマ(主稜線)

 

シオガマギクの仲間のひとつです。ヨツバシオガマのうち、飯豊以北にキタヨツバシオガマと呼ばれる種が分布し、大朝日周辺のキタヨツバシオガマは、銀玉水付近の湿ったところを好むものと稜線部を好むものと、少し形態や生態に違いがあり、氷河期あたりに分化したのでないかと調査が進められています。こちらは主稜線付近に咲いていた株です。

タカネナデシコ

 

朝日連峰では大朝日小屋の付近に多く見られます。カワラナデシコとは花弁や苞に違いがあると聞きましたが、詳しいことは忘れてしまいました。高い山の厳しい環境に咲くとは思われない可憐さがあります。

ツガザクラ

 

風衝地の岩陰あたりに咲くツツジの仲間のちいさな木です。花だけ見るとアカモノ(イワハゼ)とそっくりで、葉はガンコウランやアオノツガザクラにも似ていてあちこちで見られるのになかなかよくわからない、という花です。

ハクサンシャジン

 

ツリガネニンジンの高山型とされる花です。日当たりのよい平らな場所に多く咲いている気がします。近くの月山では山頂付近ののっぺりしたあたりに多く咲いております。

ホソバイワベンケイ

 

ベンケイソウの仲間で、岩場の隙間あたりに好んで咲きます。雄株と雌株があるそうです。割合にあちこちに見ることができますが、花もそれほど目立たないため意外に気が付かないものです。これの仲間に、住宅地付近でもよくみられるマンネングサなどもありますが、そちらもそういう草が生えていると気が付かれないほどに目立ちません。

チングルマ

 

いかにも高山植物という雰囲気の花です。草のように見えますが、実は樹木であり、ちいさな株に見えても数十年を厳しい環境のなかで生きている木です。花の後はわたのような実をつけ、秋には葉が鮮やかな赤に染まります。

ミネザクラ

 

高山に咲く喬木のサクラです。花期は6月中旬から7月上旬で、朝日連峰のなかでも残雪の状況により花の時期が異なります。秋にはいち早く明るいオレンジから赤の紅葉を見せてくれます。

ミヤマダイコンソウ

 

西朝日付近の風衝地に群落を作って咲いている場所がいくつかあります。ダイコンソウと名前がありますが、ダイコンの含まれるアブラナ科でなくキンポウゲ科の花です。秋には丸みを帯びた葉を紫色に紅葉を見せてくれます。

ネバリノギラン

 

葉と穂がランのようですが、ユリ科となっていてランではありません。花びらはあまり開かず触るとぺとっとした感触です。ノギランのほうはもっと花が開き、里近くの山に生えます。

ヤマハハコ

 

岩場に生えるハハコグサの仲間です。白い毛の生えた茎と葉で、エーデルワイスと間違う方がたまにありますが、ちょっと違っています。熊越えから銀玉水に至る道沿いや銀玉水から登っていく途中に見られます。どちらかというと乾いたところが好きなようです。

ヒナウスユキソウ(ミヤマウスユキソウ)

 

深田久弥さんの日本百名山にも記載のある花です。ちいさなエーデルワイスの仲間で、群生地では一面が白くなるほどです。茎も白いため見られる時期は長いですが、花が綺麗な時期は朝日連峰夏山開きの行われる6月中旬から下旬で、大朝日小屋の付近や、西朝日から竜門の間、寒江山付近に敷き詰めるように群生します。深田さんの日本百名山の記載には「牛に食べさせたいくらいに」咲いていたと書いてあります。

ムシトリスミレ

 

スミレと名がついていますが、スミレの仲間でなくタヌキモ科の食虫植物です。ねばねばした皿のようになっている葉に虫をくっつけて栄養を得ます。この株は朝日連峰主稜線の風衝地のほかの植物のあいだに風をよけるようにして咲いていました。

ハクサンイチゲ

 

ハクサンイチゲはいかにも高山植物、山に登らない方でも名前を聞いたことがあるかもしれません。朝日連峰でも主稜線の道沿いを飾るように初夏の風に揺れます。

ヒメサユリ

 

飯豊、朝日連峰、その周辺に分布する早い時期に咲くユリです。この花を見ることを目的に飯豊朝日に登られる方もあります。ササユリと似ていますが、ヒメサユリのほうが花弁が丸みを帯び背丈もちいさいそうです。花期は朝日連峰では6月末~7月中旬ごろまで。古寺~大朝日岳ルートでは古寺山付近から銀玉水にかけて登山道に沿って咲いているのを見ることができます。

オコジョ

 

愛らしいイタチの仲間です。朝日連峰では、銀玉水付近で出合ったという例をいくつか聞いたことがあります。好奇心が強いのか、人の足元にやってきて靴ひもをいじって遊んでいた、というようなこともあるそうです。出会ってみたい生き物のひとつです。(写真は、山岳会員Kさんより)

オコジョ2

 

2014年は、大朝日小屋周辺にオコジョがよく顔を出すようになったとのことで、小屋管理担当よりお知らせがありました。

(写真は、山岳会員GXKさんより)

ブロッケン現象

 

生きものではありませんが、山ならではの光学現象です。

太陽の反対側に、ガスや雨の水滴等があると、そこに人の影が写るなどする現象です。

(写真は、山岳会員Kさんより)